アクションラーニングとは何か
アクションラーニングとは、実業務で起こっている問題を、チームやグループで共有化、検討し、メンバーの多様な視点や思考によって真の原因を発見し、解決策を立案し、実際に実施(行動)することで確実に問題を解決していくプロセスのことです。またアクションラーニングは、そのプロセスの中でチーム・組織としての問題解決力を高め、同時にチームや組織の学習する力と個々のメンバーのチームリーダーシップ力を高める画期的な手法です。
アクションラーニングは、現実の問題に取組む中で、各個人が行動を起こし、リフレクション(内省)することで、学習していくプロセスと、個人、チーム、リーダー、そして組織が最も必要としているコンピテンシーを開発し、組織にダイナミックな変革を生み出すプログラムで構成されています。
アクションラーニングが高い注目を集める理由は何か
21世紀に入り我々を取り巻く環境は激動ともいえる変化を続けています。ITの発展、グローバルな競争や業界の再編、経営におけるコンプライアンスの強化、環境問題など時代の変革と共に、企業が抱える問題もますます複雑化してきました。それに伴い、旧来のやり方や慣習にとらわれず、成果を出すことのできる新しいリーダーシップの必要性はますます高まってきています。また、迅速な経営判断と組織的な問題解決を実現するために、現場においても俊敏に成果を達成できるチームを、迅速に育成する必要性も高まっています。
しかし、現実的には新しいリーダーシップとチームの学習力強化が必要であることを認識されていても時間的な制約の中で、なかなか実際に手をつけることは難しいケースが多々見受けられます。
そこで、これまでのような講義・実技・討議等を決められた時間枠の中で実施する研修プログラムといった学習形態ではなく、問題解決とともに、リーダーシップ開発、チーム・ビルディング、さらに、個人の成長と能力開発を同時に達成することができるアクションラーニングが注目を浴びるようになってきたのです。また、アクションラーニングは継続することで最終的には学習する組織の構築までもが可能であり、単に新しい研修手法なのではなく、短期、中期、長期にわたる経営手法ともいえます。
アクションラーニングの多様な目的
アクションラーニングは、どのような目的で企業やチームに取り入れられているのか、その内容についてご紹介いたします。
- 新しいチームコミュニケーションとチームリーダシップスキルを養成する
チーム、組織を構成するメンバーのモチベーションを高め、円滑な信頼関係とコミュニケーションによって、チームのパフォーマンスを最大化し、継続的に成長する人材と組織を構築するという目的があります。その結果、組織としての力を最大限に引き出し、飛躍的な成果を生み出すことを目指します。 - 企業、組織の抱える問題の複雑化に対応するための個人および組織の能力を養成する
問題が複雑化し今までに経験したことのない問題が多くなり、革新的なアイデアが必要とされる時代になっています。既に個人の力による問題解決は限界にきており、より組織的な多様な知識、経験を活用した問題/課題解決が必要不可欠となっています。そのためには、個々のメンバーの知見をチームとして共有し、リフレクション(内省)を伴った組織的な協働により短時間で問題を解決し、優位性のある成果を目指します。 - 成果を上げるチームを迅速に育成する
アクションラーニングの実務問題をチームの問題として捉えチームとして考え、解決のための行動計画を立案し、互いに実行をしていくというプロセスは、チーム・ビルディングを強化し活性化されたチームを短期間で育成します。結果として、顧客ニーズを満足させるサービスや製品を個人ではなくチームとして市場に課された時間制限内に迅速に提供することができます。 - 価値ある知識を蓄積し、その知識を伝達する仕組みを構築する「ナレッジ・マネジメントの実践」
知識は最も重要な組織の資産です。しかし、たいていの知識は個人またはあるグループの暗黙知となっています。アクションラーニングのプロセスにより属人化された知識を適切にチームメンバーで共有化し有効に活用することが可能です。
以上のような4つの目的以外にも、実際に現場で問題となっていることを、組織学習として解決すると同時に、組織力を高める効果を持ちます。具体的にアクションラーニングの効用は次の通りです。
アクションラーニングの効用
アクションラーニングを進めることで、1.組織が抱える複雑で高度な問題が解決でき、2.問題・課題解決の過程で、チームメンバー間の信頼感や結束力が高まりチームコミュニケーション力が醸成され、また、個人およびチームとしての問題解決力が強化され、結果的に成果を出せる強いチームが誕生します。3.マネジャーにとっては、論理的思考力、問題発見力、システム思考力、チーム・ビルディング力やマネジメント力といった新しいリーダーシップ力が開発されます。
さらに、4.価値ある情報をセッションを通じて形式知に変換し、チームメンバー間で共有し、活用することができるようになり、その情報や学習手法が組織に広がっていくと、学習する組織の構築につながります。5.メンバー個人は、問題解決およびチームに有効に貢献するための能力を自律的に開発していきます。
つまり、問題解決を行うと同時に個人能力開発と、チーム/組織開発が同時に行うことができるのが、アクションラーニングなのです。
従来の研修プログラムにアクションラーニングを導入した場合の効果性
従来の研修プログラムの大きな問題点は、仮に受講者が研修の中で高いパフォーマンスを上げたからといって、それが必ずしも実業務で成果には直結しないということです。研修の中で得た知識やスキルを現場で活かせるかどうかは、受講生の資質や環境に大きく依存し、どんなに優秀な受講者でも現場に戻り、時間が経過するにつれて、研修で得た知識やスキルを忘却していくことは避けられません。また、従来の研修で取り上げる理論やケーススタディは過去の経験に基づいているので、受講者一人一人が現在置かれている環境や抱えている問題にマッチしないことが多く、習ったことを現場で応用しようにも現実との大きなギャップに挫折しがちです。そうなると必然的にモチベーションも低下し、自主的な取り組みは忙しい現実の中で消滅していくのです。他方、研修の評価方法も受講者の主観によるアンケートや研修担当者の主観によるものが多く、本当に研修の効果が出ているかどうかを測ることが難しく、より少ない投資で迅速に育成をしたい経営サイドのニーズには応えられていません。
アクションラーニングを導入することで、以上のような問題点をすべて解消することができます。
- 『質問とリフレクション(内省)』に基づくディスカッション(ALメソッド)により、なぜその知識やスキルが必要なのかを深いレベルで気付き、心底納得してから取り組むので、現場での忘却を防ぐための手段を受講者自ら取り始める。
- 現実に抱えている問題をテーマとして取り上げるので、理論と現実のギャップは解消され、問題解決に必要な周辺知識を自ら学習し始める。
- ALメソッドは、研修が終了後の行動を重視しており、必ず受講者に研修後の具体的行動計画を立案し、グループ内で宣言、提出し且つチームとしてのコミットメントと支援が得られるので具体的成果に結びつきやすい。
- 研修後、継続的にアクションラーニング・セッションをグループで実施するため、モチベーションの低下や現場での悩みや不安を解消するとともに、常に目標達成に向けた行動計画を設定し進められる。また、行動によって得られた気づきや成果をチームとして共有することで組織学習を推進できる。
- 研修時から、アクションラーニング・セッションの学習記録、行動計画を記録し保存するので、後で成果を把握しやすい。また残した記録がナレッジ・マネジメントにつながっていく。
- ビジネス・コーチを受講者一人一人につけ、コーチングを実施することにより、行動計画の進捗や悩みや不安の解消、モチベーションを向上することができ、より効果的に結果を出すことが可能となる。
通常の問題解決がなぜ成功しないのか
実際に問題解決手法はいくつか存在していますが、なかなか成果に結びつきません。それは何故でしょうか。次のことが成功を阻害する要因であると考えられます。
- 本質を理解するより思い込みで判断する
データや、事実、論理を無視し、自分の思い込みで判断して進めてしまうケースが多く見られます。 - 声が大きい人、経験のある人が主導権を握り、反対意見や多様な視点を吟味しない
声が大きい人が主導権を握ってしまうと、どんなに良い意見を持っていても発言できない場合があります。アクションラーニングは、意見ではなく質問を中心にセッションを進めることで職位や経験、声の大小に左右されることなく本質的な問題解決に集中することができる。 - 部分しか理解できず全体が見えない
全体把握をせずに部分的な解決策を進めることは、結局応急処置にしか過ぎず、違う場所に違った形で問題が表面化することが少なくありません。また、応急処置に長けた組織は、根本的解決が遅れがちになり、気付いたときにはもう手遅れということも珍しくありません。 - メンバー全員の同意を得ずに進める
全員が同意していないのに問題解決を進めると、個々人のモチベーションは下がり、行動計画を誰も真剣に実行しようとはせず、最終的によい結果を得ることができません。 - 解決策を実行しない
最も大きな問題は、解決策や実行計画を立案したとしても、それを実行せず、一回きりの研修や会議で終わり、結局は何の意味も持たないものになってしまう場合が多いということです。問題解決のための手法であったとしても、やり方によっては、逆効果になります。
従来の問題解決手法が一概に悪いのではなく、実行および実行結果のフィードバックを行うプロセスおよびチームとしての強いコミットメントの醸成が重要なポイントとなります。
アクションラーニングではないもの
皆さんは、一度はアクションラーニング、という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。中には間違った認識を持っている方もいるかもしれませんので、ここでアクションラーニングではないものを、参考に上げておきます。
- ケーススタディ:過去に取扱った事例
アクションラーニングは、現実問題(緊急で重要)を扱います。また、未来志向、個人、チームの育成に重点を置いています。過去の事例を元に行うような手法とは全く異なります。 - オフサイトミーティング:具体的な解決行動に強制力なし
アクションラーニングは、具体的で継続的な行動を前提に進めます。実際に行動まで行い、解決していくことによって、成果が得られます。 - コーチング:個人に対するアドバイスやコミットメント
コーチングは、1対1のアドバイスとコミットメントを行いますが、アクションラーニングは個人とチームの学習と問題解決にコミットメントしていきます。