いま思えば、私のビジネスキャリアの大半は、良いチーム探しに明け暮れた日々でした。
私のキャリアは大手コンピューターメーカーから始まり、人一倍、競争心の強い私は、大組織の中で、がむしゃらに仕事に打ち込み、熱中していきます。
26歳の時、最年少でチームリーダーを任され、当時、4人の部下を持つことになります。
当時は、どうしたら他のチームよりも良い成果が出せるか、どうしたら目立てるか、そんなことにばかりに気を取られていました。
しかし、そんな傲慢な想いに、今にして思えば驚くことですが、部下たちは全力で着いてきてくれます。
彼らは私の期待以上の働きをしてくれました。
そんなチーム全員の働きのおかげで、周りからも一目置かれ、私は自分のチームに自信と誇りを持っていました。
本当に良いチームでした。
しかし、転機が訪れます。私が人事異動で、他の部門に行くことになったのです。
私の後任を、信頼していたサブリーダーの後輩に任せ、私は新たな部門に着任しました。
新たな環境で仕事を始めてまもなく、リーダーを任せた後輩がチーム運営で悩んでいることを聞かされました。
新たな部門でいっぱいいっぱいになっている私は「がんばれ」としか言ってやれません。
そして、まもなくして、彼は失踪したのです。
私が創り上げ、誇りを感じ、良いチームだと確信していたチームは解体されました。
私は彼を育てていなかった。私が強いチームだと考えていたものは幻想だった。
チームとは何なのだ!
良いチームとは何なのだ!
そして、良いチームを創れるリーダーとはどのような姿なのだ!
私は自分のすべてが否定されたような絶望を感じました。
そして、しばらくして私は最初の退職を経験します。
ここから私の良いチーム、良いチームリーダー像探しの旅が始まったのです。
その後、私は良いチームを探し出せないまま、ありとあらゆる組織に転職を繰り返すことになります。
大手監査法人立ち上げたベンチャー組織、零細の人事コンサル会社、大量に新人を採用するIT企業、多くの店舗を展開するアミューズメント企業、そして外資のコンサル企業。大企業、中小、零細、そして外資系企業までさまざまな企業、組織、チームを駆け抜けました。しかし、良いチームにも良いチームリーダーにも出会うことができませんでした。
結局、私は青い鳥症候群同様、どこかに夢のようなチーム、どこかに夢のようなリーダーがいると思い込んでいたにすぎなかったのです。
そもそも、良いチームとは何なのか?
この答えを最初に退職したあの日から、10年以上をかけて探し続けましたが、見つけることができませんでした。
そして、改めて今まで所属してきたチームと自分を振り返ったのです。
上司に気を遣い、部下に気を遣い、目先の成果を達成するためにキリキリと胃を痛め、ストレスに押しつぶされそうになる日々。
チームに笑顔などなかった。トイレの鏡に映る自分の顔は憔悴しきっていた。
こんな顔をしている上司を見て、部下が元気になるはずがなかった。
それでも口ではやる気を出すように求めていた。やる気のない部下を大声で叱責していた。
まさに、良いチーム、良いチームリーダーの対極に自分がいたことに気付きました。
これでは、誰も報われない。誰も成長できない。誰も笑顔になれない。そしてそれは、そのまま自分自身も同じでした。そんな想いばかりが頭の中を回り続けていました。
そして、私が見てきた他部署の多くの組織も同様にその対極にありました。
この社会の組織は間違っている。そして、同じくチームマネジメントも。
私のビジネスキャリアの大半はこの気付きを得るためにあったのだと、痛感した瞬間でした。
良いチーム創りの方法を知ることの意義
これまで私の目の前には人を不幸にしてしまう組織が常にありました。そしてこの不幸の本質は、良いチームを創る方法を誰も知らないことなのだと私は理解しました。
チームの最小単位は家族です。そして学校をはじめ、あらゆる社会活動はチームによって運営されています。そして、企業はチーム力いかんで生き残れるかどうかが決まると言っても過言ではないでしょう。
私は、良いチーム創り、つまりチームビルディングを極め広めることが大きな社会貢献につながると確信しました。
良いチームは、私たちそれぞれに自分自身がやりがいと生きがいを実感しながら働く場をもたらします。
そしてそれら数多くの良いチームが生まれることで得られる最も大きな成果は、私たちみんなが価値ある人生を送ることができるということ。このことに尽きるのではないかと思うのです。
チームビルディングは魔法の杖ではありません。まず、良いチームを創ろうというリーダーの強い意志が必要です。そして、リーダー自身の〝人としての成長〟の上に、チームの成長があります。リーダーはチームビルディングを通じて自分と対峙し、ときには過去の成功体験や慣習から決別し、またあるときは自らの過ちを認め、それを正すことが求められます。
それは、辛く、「そこまでしなくともリーダーの職務に何の問題もないのではないか」と考えることすらあるでしょう。
しかし、それらはすべてリーダーとしての役割を通じて人として成長する機会を与えられていると考えてほしいのです。
そして、いつの日か肩書きではなく、自分の持つ人格によって誰もが認める、信頼するリーダーになってほしいのです。
リーダーという辛い役割を引き受ける醍醐味は、圧倒的な自身の成長機会を手に入れることであり、人としての豊かな尊厳を獲得することにあるのではないでしょうか。
なぜチームが必要か。それは、私たちは一人では何もできない。誰かとつながり、チームを創り、達成感、一体感から本物の充実感を獲得する。
チームビルディングへの取り組みは、人生を豊かにするためのチャレンジであり、チームリーダーにはそれを生み出すチームを創る、という尊い使命があるのです。
株式会社アクションラーニングソリューションズ 代表取締役社長
一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
齋藤秀樹